「かまくら春秋」
連載
vol.9
虫のことで、最近よく聞かれる質問がある。それは「温暖化の影響はどうですか」である。もう何度聞かれたか、わからない。
鎌倉でいちばん目立つのは、ツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ、アカボシゴマダラである。私が子どもだったころには、こういうチョウは鎌倉にむろんいなかった。このうちナガサキアゲハだけは、温暖化のせいだろうといわれることが多い。ツマグロヒョウモンは食草がスミレで、あちこちにパンジーを植えるようになったのが増えた原因だという人がある。チョウ自体も、野生のスミレでなく、パンジーを食べるという性質に変わったのかもしれない。アカボシゴマダラは間違いなくだれかが放したもので、遺伝子を解析したら中国のものだったという話を聞いた。ただ日本では元来奄美大島あたりにいたチョウだから、暖かい土地でないと住まないことは間違いない。