「かまくら春秋」
連載
vol.4
虫のことを考えていると、自分は幸せな時代を生きたんだなあと、しみじみ思うことがあります。なぜって、私が子どもだった頃は、鎌倉でも虫がとても多かったからです。
ほとんどの人にとって、それは迷惑以外の何ものでもなかったはずです。戦後に日本にやってきたアメリカ人がまずやったことといえば、DDTを撒くことでしたからね。この殺虫剤は自然には分解されない分子構造をしていたので、後になって使用が禁止になりました。その害をはっきり指摘したのが、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』です。鳥が歌わない春が来た、と。鳥の卵の殻がどんどん薄くなり、雛が育たなくなりました。DDTのせいです。虫の身体にDDTが入り、その虫を食べた鳥の身体に今度はDDTが蓄積されるのです。......